大手ハウスメーカーの住宅にホームインスペクションは必要か?新築と中古に分けて必要性を解説
住宅を購入したり建築したりする際に、買主や施主が依頼することが多くなったホームインスペクション(住宅診断)ですが、これは、誰もが知っているような大手ハウスメーカーが建築した住宅にも必要かどうか迷う人が少なくないようです。
「大手ハウスメーカーで家を建てるので、安心でしょうか?」
「購入予定の中古住宅は、新築時は大手ハウスメーカーが建築したので、ホームインスペクションは不要でしょうか?」
このような相談を受けることがあります。
日本では、大手企業に対する信用が、中小企業に対するものより高いため、このように考える人がいるのもわかります。
しかし、大きな資金を投じ、多額の住宅ローンまで組んで購入するマイホームですから、大手と言うだけで全面的に信用してよいかどうか、迷う人が多いのも事実です。
そこで、大手ハウスメーカーが建築する住宅に対しても、第三者のホームインスペクションが必要かどうか解説します。
大手ハウスメーカーの住宅の基本
大手ハウスメーカーの住宅への憧れ、安心感を持っている人は多いですが、大手の住宅の特徴について整理しておきましょう。
大手ハウスメーカーはどの会社か?
「大手ハウスメーカー」に定義がないため、人によってイメージするものに違いがありますが、誰もが認めるであろう大手ハウスメーカーとしては、以下の企業が挙げられます。
- 積水ハウス
- 大和ハウス工業
- 住友林業
- 旭化成ホームズ(ヘーベルハウス)
- 飯田グループホールディングス
- オープンハウスグループ
- 一条工務店
- セキスイハイム
- タマホーム
- ミサワホーム
- 三井ホーム
- パナソニックホームズ
- トヨタホーム
- スウェーデンハウス
- アイ工務店
以上は、売上規模で上位から15位までです。
人によっては、一部の企業名を知らいない人もいるかもしれませんが、多くの人にとっては聞いたことくらいはあるのではないでしょうか。
高額な住宅もローコスト住宅もある
売上規模で挙げた15社を見てみると、高額な住宅を販売・建築するメーカーと低価格な住宅を提供するメーカーに分けられます。その中間の価格帯もあるものの、高額か低価格のいずれかで特徴を出している企業が多いです。
安心感を持つのは規模だけではなく、建物が高額であることが前提か
企業への安心感の感じ方は人によって異なりますが、売上規模が大きい企業の全てに安心感を持つわけではなく、提供される住宅の価格帯によるイメージが大きく影響しています。低価格の住宅より、高額な者に対して安心感が高い人が多いのです。
実際のところ、インターネットでハウスメーカーの口コミ情報を見ていくと、低価格路線の企業の方が、良くない情報が多いです(すべてが事実とは思えませんが)。
2003年の創業時より、長年、多くの住宅に対してホームインスペクションをしてきたアネストには、大量の検査データが蓄積されていますが、その実績・経験より、低価格路線のハウスメーカーの家の方が、高額なものよりも指摘箇所の量が多い傾向にあるのは確かです。
しかし、高額だから大丈夫だと言えるわけではないので、過信は禁物です。
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大手ハウスメーカーの家へのホームインスペクションの必要性
大手ハウスメーカーが建築する住宅に対するホームインスペクションの必要性の有無について、新築住宅と中古住宅に分けて説明します。
新築住宅を購入するとき・建築するとき
大手ハウスメーカーが建築する住宅は、企業や工法によって、建築手法が大きく異なります。
大手では、中小の工務店に比べて工業化が進んでいるため、工場で生産した部材を現地で組み立てていくものが多くなっていますが、工業化の度合いは会社によっても違いがあるからです。実は、同じハウスメーカーであっても、商品によっても違いがあるので、単純に会社名だけで判断すべきでもありません。
たとえば、外壁・防水・断熱を工場で作り、それを現場で組み立てていく工事の場合、そもそも防水や断熱を確認できないこともあります(断熱だけ確認できないなどもあります)。また、現場で基礎配筋工事をしない住宅まであります。
こういった住宅では、建築途中に行うホームインスペクションの必要回数が少ないことになります。構造耐力(基礎を含む)、防水、断熱といった大事な項目を網羅した検査項目とする場合、木造軸組工法(在来工法)なら、必要な検査回数が8回程になりますが、工業化が進んだ住宅なら3~5回程で対応できることが多いです。
しかし、前述した大手のなかでも、それほど工業化を進めていないハウスメーカーは多く(特に低価格路線のメーカー)、その場合は、同じく8回程となります。
逆に言えば、工業化が進んでいるとはいえ、チェックすべき項目が3~5回程はあるということですから、大手ハウスメーカーが建築する新築住宅でもホームインスペクションの必要性があるということです。
新築では、施工不良の有無を検査する内容で、指摘事項を補修してもらうために利用されていますが、完成物件を購入するとき(つまり建売住宅を買うとき)には、購入判断の参考とするために、契約前に利用するケースもあります。
中古住宅を購入するとき
中古住宅を購入しようとしたとき、その物件が新築当時に大手ハウスメーカーが建築した住宅であったというケースは多いです。このような場合でも、ホームインスペクションが必要かどうか迷う人がいるようです。
先に答えを言えば、インスペクションは必要です。
大手が建築したとはいえ、新築当時に施工不良があったケースはたくさんありますし、新築時の施工が良くても劣化の進行により建物の状態が良くない物件もあるからです。
中古住宅の売主によっては、補修すべきと感じていた不具合があっても、コストがかかることからそのまま放置していて、劣化進行が酷いこともあります。また、売主が全く気付いていない問題が見つかることもあります。
よって、大手が建築したかどうかに関わらず、中古住宅を買うときには、ホームインスペクションすることをお勧めします。
大手メーカーというだけで安心感を持つことがありますが、必ずしも安心してよいとは言えない現実がありますので、注意しましょう。
執筆者
全国で第三者の一級建築士がホームインスペクション(住宅診断)を行うアネスト。新築・中古住宅の購入時やメンテナンス時などに建物の施工ミスや劣化事象の有無を調査することができる。