住宅購入時のホームインスペクションは初期調査

住宅購入時のホームインスペクションは初期調査

新築でも中古物件でも購入時に利用されることが多いホームインスペクション(住宅診断)ですが、その一般的な調査の内容が初期調査であることをご存知でしょうか。購入前のインスペクションでどこまで調査してもらえるのか理解されていない人は、ここでそのイメージを掴んでください。

住宅購入時のホームインスペクションは目視調査の初期調査

一般的に利用される住宅購入前後のホームインスペクションは、初期調査もしくは一次調査だと言われています。それがどのようなものなのか、ここで解説します。

調査内容

調査の基本は目視です。目で見て症状の有無を確認していく作業です。これと併せて、触診・打診といった調査手法が用いられます。触ったり叩いたりして確認するということですね。触るのは基本的に手で行いますが、叩く(打診)は手や打診棒などを使用します。

目視を中心としたと調査ではありますが、いくつかの調査器具は使用します。既に打診棒というものが出てきましたが、この調査器具以外にも水平器や下げ振り、メジャーなどが使用されます。インスペクション会社によっては、水分計(土台などの木材の含水率を計測する)を使用することもあります(アネストでも使用しています)。

調査範囲

非破壊、つまり建物を壊さずに調査時の現況のままで行う調査ですから、隠れて目視できない範囲は調査の対象外となります。たとえば、壁の内部や基礎コンクリートの内部は確認することができません。但し、目視できない箇所を直接調査することはできませんが、関連する症状が外部に現れている場合は内部に異常が存在する可能性について言及できることはあります。

また、床下や小屋裏については点検口などの内部を確認できる箇所があるときにのみ調査対象となっています。但し、床下や小屋裏内部へ進入して行う調査はオプションで選択制となっていることが多く、費用負担との兼ね合いなどで検討して利用有無を判断することになります。

国交省のガイドラインでも初期調査(一次調査)として位置付け

2013年6月に国交省より公表された既存住宅インスペクション・ガイドラインというものがあります。このガイドラインは中古住宅の売買時に際して行われるインスペクションを対象としているものですが、そのなかで中古住宅の売買時に行う検査として以下のように示されています。

目視等を中心とした非破壊による現況調査を行い、構造安全性や日常生活上の支障があると考えられる劣化事象等の有無を把握しようとするもの

ポイントは、「目視」「非破壊」という部分です。これが、住宅購入前に利用するホームインスペクション(住宅診断)の基本だということです。

ちなみに、不具合箇所の修繕のために利用されるインスペクションについては以下のように示しています。

破壊調査も含めた詳細な調査を行い、劣化事象等の生じている範囲を特定し、不具合の原因を総合的に判断しようとするもの

売買時に利用するインスペクションとしては、主な目的の1つとして何か問題となる劣化事象がないかを確認するものであって、その見つかった劣化事象の原因を調査するためのものではないのですね。

なぜ購入時は初期調査なのか?

利用者としては、インスペクションを利用するならば、できることは何でもしてほしい、初期調査に限定せずにもっと深い調査ができるならばやってもらいたいと考える人もいることでしょう。では、なぜ住宅購入時に実施されるホームインスペクション(住宅診断)は初期調査なのでしょうか。

購入時に破壊調査は非現実的

非破壊ではなく破壊調査を希望しても住宅購入時には実施できない明確な事情があります。破壊調査とは必要に応じて壁や天井、床などの一部を壊して、普段は見えない箇所を確認する調査なのですが、購入前であれば買主が調査してから購入を中止することもありますから、売主としては建物の一部とはいえ破壊されては困りますね。

買わないならば、買主の責任で復旧すればよいと考える人もいますが、復旧工事の費用負担は決して小さなものではありません。また、復旧工事の品質や仕上げ材の選定などで売主と買主がトラブルになる可能性も十分に考えられます。

売買契約後であっても、契約中止となることもありえることですから、引渡しを終えるまでは破壊調査はできないのが現実なのです。

高度な専用機材を使用しての調査は高額になる

調査器具にもいろいろなものがありますが、なかには高額な調査料金がかかる器具もあります。そういったものは、購入判断のために利用するには買主の費用負担が重すぎて利用しようと考える人はほとんどいません。ほとんどいないとなれば、インスペクションを提供する会社側としても僅かしか利用することのない高額な専用機材を揃えるのは難しいものがあります。

しかも、そういった機材を使用して建物全体を調査するのはあまりに手間がかかりすぎて非効率でもあります。

何らかの症状が見つかり、その原因調査をするときには症状のある個所やその周囲から専用機材を使用して確認作業を進めていくわけですから建物の一部に対してのみ機材を使用するのです。これを建物全体に対して使用するのは、さらに高額な調査料金を要する結果となり、非現実的なものとなっているのです。

初期調査でも購入判断やメンテナンスの参考にはなる

一般的に利用されるホームインスペクション(住宅診断)が初期調査であるならば、それが本当に住宅購入時や建物のメンテナンスなどを検討する上で役立つものかと疑問を持つ人もいるかもしれません。

初期調査は完璧なものではありませんが、様々な建物の症状の有無や程度を観察することで、建物の状態を概ね掴むことができます。これは、購入やメンテナンス等のために役立つ情報も多いですから、完ぺきではないにしても有益なものとなることが多いです。

利用した結果として、特に問題視される症状が見つからなければ、1つの安心材料となりますし、何かが見つかればそれだけのリスクがあることがわかります。

執筆者

アネスト
アネスト執筆担当
住宅購入や新築、リフォーム時のホームインスペクション(住宅診断)を行うアネストが執筆、監修している。