新築住宅の引き渡し前の立会いの重要性とホームインスペクションの必要性・効果

新築住宅の引き渡しとホームインスペクション

新築の建売住宅を購入したり、注文建築で家を建てたりしたとき、その取引の最終段階で売主(または建築会社)から買主(または施主)へ住宅の引き渡しが行われます。ようやく自分のものになるという喜び、楽しみがある一方で、はじめて新築住宅の引き渡しを受けることから、不安を感じる人も多いです。

そもそも引き渡しとは何か、引き渡しに際して何かしておくべきことがないか、何も考えずに取引を進めて購入代金や建築代金を全て支払ってしまって大丈夫かと考えるのも無理はありません。大きな金銭が動くわけですから当然のことです。

引渡し前の不安を払拭するために役立つ情報として、新築住宅の引き渡しとその立会いの基礎知識を紹介した上で、引渡し前に行う立会いの重要性をその理由と共に解説します。その上で、立会いに際して利用するホームインスペクションの必要性とその効果についても解説します。

新築住宅の引き渡しとその立会いとは?

引き渡しがどういうものであるか、その言葉から何となく想像している人が多いと思いますが、正確に理解できていますか?知らないと言う人だけでなく、今の自分の理解と事実の相違がないか確認するためにも、読んでみてください。

新築住宅の引き渡し前の立会い

新築住宅の引き渡しとは買主・施主のものになること

引き渡しとは、占有しているものを誰かに渡すことです。たとえば、パン屋さんでパンを購入するとき、代金と引き換えに購入したパンを手渡してもらいますよね。これも引渡しです。

新築住宅の売買や建築においては、手渡すわけにもいかないので、買主(注文建築なら施主。以下同様)が自由に使えるように売主(注文建築なら請負業者である建築会社。以下同様)から買主に鍵を渡し、引渡し証明書に署名することをもって引き渡しとすることが一般的です。

つまり、出来上がった建物とその敷地が、買主のものになることです。また、登記上は、建物の所有権保存登記または移転登記を行うことで、名義が買主になりますが、その登記申請はこの引き渡しと同時に行います。引き渡し当日に登記は完了しないので、実は登記上の所有者として登記を確認できるようになるのは、数日後です(1週間くらいで確認できることが多いです)。

引渡し前の立会いとは施主検査や内覧会

新築住宅の引渡し前に行う立会いについて解説します。

ここで言う立会いとは、建物の完成状態を買主が確認し、購入したものに相違ないか、施工不具合などの問題が無いかを確認する機会のことで、内覧会や竣工検査ということも多いです。また、注文建築の家なら施主検査ということが多いです。

立会いでは、単に現地に言って立ち会っているだけでよいというものではなく、施工不具合などを確認しなければならないことをよく理解しておきましょう。不動産会社や建築会社から、「傷をチェックしてもらう機会」だと案内されることもありますが、傷や汚れをチェックするだけで終えてしまっては入居後に後悔することもあるので、注意してください。

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引渡し前の立会いの重要性とその理由

新築住宅の引き渡しの前に行う立会い(内覧会や施主検査のこと)の基礎的なことがわかったところで、その重要性を説明しておきます。ここを理解しておかないと、気軽に大事な立会いの機会を逸してしまうことになるので、以下を読んで確認しておいてください。

引き渡しは建物が完成した状態で行うべき

まず、基本的なこととして理解しておくべきことは、住宅の引き渡しは、建物が最後まで完成した状態で行うべきということです。さすがに、屋根も窓もない状態で引渡しを受ける人はいませんが、大体の工事を終えているからといって、全てが完成していないのに引渡しを受けることは危険です。

ちょっと一言

引渡しは住宅売買、建築における取引で最後にある大事な局面です。買主側の都合で早く引渡しを受けたいときでも、リスクがあるので、完成を待つようにしてください。

引渡し前に施工不良を補修する必要がある

全ての完成とは、ざっくりとした見た目の問題だけではありません。施工ミスなどの補修工事(是正工事)も完了した状態を指しています。

建築会社などから、「悪いところがあれば、引き渡し後でも補修するので、先に引き渡しと残金の支払いを進めます」と説明されることがありますが、本来の引き渡しは確認されている施工不良などは補修してから引渡すべきものですので、このような説明に不用意に従ってしまうことのないよう注意しましょう。

引渡し前に施工不良を補修する必要があることを理解しておきましょう。

引き渡し後の補修工事は対応が悪いことがある

では、なぜ引き渡し後ではなく、引き渡し前の補修工事を求めるべきなのか説明しておきます。それは、引き渡し後になった途端に対応が悪くなる建築会社の担当者がいるからです。

たとえば、連絡しても連絡がつきづらいとか、メールしても返信をくれない、なかなか補修工事を始めてくれないといった状況になることがあります。

引き渡しに際しては、売買代金や建築代金の全てを支払うのですが、支払った後に態度が急変する人がいるのは、住宅業界のよくないところです。もちろん、これは会社や人によって大きく異なるところであり、引き渡し後でも約束通りにきちんと対応してくれる人は多いです。しかし、対応が悪くなる人がいることも事実なのです。

立会いを軽視して後悔する人が多い

ここまでの解説内容より、新築における引き渡し前の立会いの大切さがわかってきたと思います。

長年、ホームインスペクション(住宅診断)をしてきたアネストには、引渡し前の立会いで十分な建物チェック(施工不具合の確認)をせずに、そのまま入居してから後悔しているという人から、入居後の依頼があります。

入居後であっても建物の施工品質をチェックできるものの、前述したように売主側の対応の悪さであったり、家具・荷物で確認できない範囲があったりするので、引渡し前の機会を軽視することなく、しっかり対応するよう心掛けてください。

引き渡し前のホームインスペクションの必要性と効果

新築住宅の引き渡し前の立会いという機会が非常に重要なものであることは理解できたと思います。そこで、その立会いに際して、ホームインスペクターに依頼して建物チェックをしてもらうホームインスペクションの概要と必要性、その効果を解説します。

引き渡し前のホームインスペクション

専門家によるホームインスペクションの必要性

建築および建物検査の専門家であるホームインスペクターによるホームインスペクションが、引渡し前の立会い時に有効であることと必要性を解説します。

建物チェックは素人には難しい

建物は、普段から多くの人が居住、仕事、生活の様々な場面で利用しているものの、建築物に関する専門知識や経験を持っている人は限られています。知識・経験がない一般の人、つまり建物の素人が、自分たちだけでチェックし、適切に施工不良を指摘していくのは大変難しいものです。

実は、建物の専門家と思われている建築士であっても、誰でもできる仕事ではありません。建築士にもそれぞれの専門分野、得意分野というものがあり、資格を持っていても適切にホームインスペクションをするだけの能力を持っている人は限られています。

それだけ、建物チェックは難しいということです。チェックすべき項目がわかりづらいし、チェックポイントを知っていても、現場で見つけた事象を判断しづらいことが多いのです。

指摘しても売主・建築会社に誤魔化されることがある

自分で頑張って建物チェックをして、施工不具合と感じた箇所を売主や建築会社へ指摘したとしても、「それは、許容範囲です」「機能的に何ら問題ありません」などと回答されることがありますが、その回答が事実かどうか、妥当なコメントなのか、自分たちだけで判断できずに困ることがあります。

実際に、本当に問題ないこともあれば、実は補修すべき症状であるにも関わらず、誤魔化そうとしていることもあるので、注意が必要です。こういったときに、専門家がホームインスペクションを行っておれば、誤魔化されることがありません。

床下・屋根裏まで自分で見られない

建物の大事なチェックポイントとして、床下と屋根裏(小屋裏)が挙げられます。

どちらも、建物の構造耐力に関わる部位や施工ミスが多い断熱材などの重要な箇所を確認できるスペースですが、その内部の奥まで慣れていない人が入っていくのは危険です。特に屋根裏は、体重をかける箇所を間違えると天井材を破って落ちてしまうリスクまであります。

そういう大事なポイントを見てもらうためにも、プロのホームインスペクターを頼ることを考えるとよいでしょう。

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引き渡し前に行うホームインスペクションの効果

プロのホームインスペクションを引渡し前に行う効果は何でしょうか。引き渡し後でも依頼することができるものですが、引渡し前に依頼することのメリットや効果を紹介します。

引き渡し前に補修すべき点を把握・指摘できる

引渡し前にホームインスペクションを行うことによって、当然のことながら、引渡し前の時点で施工不具合を依頼者が把握することができます。把握できるわけですから、売主や建築会社へ指摘して、補修を求めることもできます。

引き渡し後では、補修対応してくれないことでも、引渡し前なら対応してくれることがあるので、メリットとなりますし、それだけ、依頼する効果が大きいとも言えます。

マイホームに対する安心感を得られる

ホームインスペクションを依頼する人から、「安心感を得たいので利用する」という意見を聞くことは多いです。漠然とした不安を抱えたままで、大きな資金を投じて、住宅ローンを利用してまで購入し、住み続けるよりは、安心感を得たいと考えるのは理解できますね。

大事な部位で施工ミスがいくつも見つかると不安が大きくなるかもしれませんが、補修対応を求めることができますし、大きな問題がなければ、安心感を得ることができます。引き渡し後よりも、引渡し前の方が補修交渉をしやすいというメリットもあるので、引渡し前の方が安心感も大きいです。

まとめ

新築住宅における引き渡しの意義とその前に行う立会いの重要性を理解した上で、そのときに専門家が行うホームインスペクションの必要性が分かったことと思います。

しかし、プロの診断であるとはいえ、建物が完成した後に行うものですから、何もかも全てを調査できるわけではないことも理解しておき、入居後も定期的な点検と早めのメンテナンスを心がけてください。それが、建物をよい状態で長く保つコツであり、長い目で見れば、メンテナンス費用も含めた総負担額を安く抑えることにもなるでしょう。

引き渡し前のホームインスペクション

適切な補修工事

入居後の定期的な点検

早めのメンテナンス

住まいの総費用負担が安くなる

執筆者

アネスト
アネスト執筆担当
住宅購入や新築、リフォーム時のホームインスペクション(住宅診断)を行うアネストが執筆、監修している。
アネストのホームインスペクション

全国で第三者の一級建築士がホームインスペクション(住宅診断)を行うアネスト。新築・中古住宅の購入時やメンテナンス時などに建物の施工ミスや劣化事象の有無を調査することができる。