レポートの品質や想いで選ぶホームインスペクション
建物の施工品質(工事の手抜きや施工ミスの有無)や劣化・腐朽具合などを目視・打診・計測などによって調査し、確認された事象から補修の必要性などを判断していくのがホームインスペクション(住宅診断)というものです。
このホームインスペクションを利用するとき、どんな人が現場で診断するのか、どれだけの項目をチェックしてくれるのか、どれだけの診断経験があるのかといったことを考えるものです。これらはいずれに大変大事なことですから、そういったことを知るのは必要なことです。
しかし、こういった現場に関することだけではなく、もう1つ見落としがちなもので大事なものがあります。それはホームインスペクション(住宅診断)のレポート(報告書)です。診断した項目や結果が記載されたもので、診断結果をみて住宅の購入判断やリフォーム・リノベーションなどに活用していくことができます。
ホームインスペクション(住宅診断)のレポートは、各ホームインスペクターや会社によって内容に大きな差があります。現場で診断していく作業も大変なものですが、診断後にパソコンに向かってレポートを作成していく作業も実はなかなか大変なもので、多くの時間を要します。
その労力を抑えたいがために、レポートを簡易的なものにすることもありますが、これには注意した方がよいでしょう。
ホームインスペクション(住宅診断)の際に現場に同行すれば、診断対象の項目や結果の説明などをその場で聞くことができて非常に有意義なものです。しかし、数時間かけて診断していく内容を全て覚えておくのは少々無理があります。
後日、補修工事(是正工事)が入った後の確認をしたり、リフォーム・リノベーションを検討したり、工事会社と打ち合せしたりするときには、詳細なレポートの有無が大きく影響します。せっかく第三者の専門家にホームインスペクションしてもらったのに、その結果を十分に活かせないというのはもったいないです。
それでは、ホームインスペクション(住宅診断)のレポートとして良いものとはどのようなものでしょうか。私なりに重要だと考えることをあげてみます。
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第三者の一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)は、住宅売買・メンテナンスなどに役立つ専門的な技術サービスです。施工不具合や補修すべき劣化事象の有無をプロに診てもらえる。
ホームインスペクション(住宅診断)のレポートで大事なこと
- チェック形式だけでなくコメント(文章)で説明があること
- 問題なかった項目も明記されていること
- 調査できた範囲を明確にしていること
- 調査結果が居室毎にまとめられていること
- 総評が付いていること
- 写真と写真に対するコメントがあること
上記について1つずつ説明していきます。
1.チェック形式だけでなくコメント(文章)で説明があること
チェック項目の横に□があり、そこにレ点を付けていく(もしくは■に変換していく)だけのレポートを見かけることがあります。チェック形式になっていることはよいのですが、レポートがそれだけでは情報不足です。
いろいろな項目に問題があったとしても、それがどの程度のものなのか、総合的に見てどう考えるのかを理解する必要があるため、チェック形式のみのレポートではあまり役立ちません。
2.問題なかった項目も明記されていること
現場で指摘された問題ある箇所をレポートに記載するのは当然のことです。しかし、問題がなくとも調査したのであれば結果を記載しておかねば、調査していないために記載がないのか、調査した結果として問題がなかったのかわかりません。
3.調査できた範囲を明確にしていること
ホームインスペクション(住宅診断)は全ての住宅において、同じ調査範囲であるわけではありません。建物のプラン等の条件によって調査可能な範囲・項目が大きくかわってくるものです。そこで、レポートには調査できた範囲を記載しておくことが望ましいです。
たとえば、床下を点検できたかどうか、屋根裏を点検できたかどうかといったことです。できれば、床下の点検が点検口のすぐ近くだけなのか、床下面積の何%程度を調査できたのかも明確にしておきたいところです。正確な面積の数値を出すのは難しくとも概ねの範囲を記載したレポートが理想です。
調査範囲が明確であれば、後から何か問題・トラブルが生じた際に、ホームインスペクション(住宅診断)で調査した範囲かどうかで切り分けるヒントになったり、問題解決のためにどこに点検口等を設置する必要があるか検討したりすることもできます。
4.調査結果が居室毎にまとめられていること
意外と多いのですが、建物全体に横断的な記述になっているレポートがあります。たとえば、壁について調査結果が記載されているものの、その壁がどの部屋のものであるか不明瞭なことがあります。きちんと部屋ごとにわけて調査結果が記載されているレポートであることは必須です。
5.総評が付いていること
総評は実際に現場で診断した人の見解です。チェック形式だけのレポートでなく、この総評で見解をまとめられていないと利用した人も判断しづらいことがあります。ただのチェックマンではなく、プロとしての対応です。
6.写真と写真に対するコメントがあること
レポートには診断時の写真が必要です。床下や屋根裏のように依頼者が入りづらいところについては、とくに重要です。ただ、写真を並べているだけのレポートもありますが、あまり意味がありません。写真で撮影された箇所がどう判断されているのか、各写真に対してのコメントが必要です。
繰り返しますが、ホームインスペクション(住宅診断)のレポートを作成する作業は、なかなか大変なものです。ただ、ここで手を抜くことはホームインスペクション(住宅診断)の品質を落とすことと同じです。依頼者としては、どのようなレポートが提出されるのか依頼前に確認しておくとよいでしょう。
執筆者
全国で第三者の一級建築士がホームインスペクション(住宅診断)を行うアネスト。新築・中古住宅の購入時やメンテナンス時などに建物の施工ミスや劣化事象の有無を調査することができる。