住宅購入の際のホームインスペクションが必要ないか(メリットと不要とする理由)
住宅を購入しようとしたとき、建物の状態把握のためにホームインスペクションを依頼したいと考える人は多く、多くの人が売買契約前に利用していますが、一部の不動産会社や営業マンが「ホームインスペクションは必要ない」と言うことがあるため、買主が迷ってしまうことがあります。
ホームインスペクションは、住宅の購入や売却前に行われ、建物の健康状態や安全性を評価する専門的な診断で、買主にはリスクの把握や価格交渉の強化、売主には損害賠償リスクの軽減や売りやすさの向上が期待されます。それでも否定的な不動産会社もあるということです。
インスペクションの基礎知識とメリット、不動産会社が必要ないと言う理由を紹介するので、本当に必要ないかどうか、自分自身でもしっかり考えるきっかけとしてください。また、利用するなら、売買契約前のタイミングで依頼することをお勧めする理由も紹介します。
ホームインスペクションとは何か
ホームインスペクションは、住宅の購入や売却前に専門家が行う建物の全体的な健康状態や安全性の診断です。購入者は潜在的なリスクや修繕の必要性を明らかにし、対象物件の建物の状態を客観的に把握することを目的として利用しています。売却者は売却後の損害賠償請求リスクを抑えることや、売りやすくすることを目的として利用しています。
構造耐力、雨漏りのリスク、設備配管、断熱材などについて調査し、問題が発見された場合には、買い手と売り手の交渉材料となることもあります。ホームインスペクションは、住宅取引において信頼性と透明性を提供し、住宅売買の活性化や市場の健全化に役立っています。
参照HP
ホームインスペクションのメリット
ホームインスペクションが本当に必要ないものかどうかは、人によって考え方もいろいろあるので、一概に言い切れるものではありません。しかし、そのメリットを把握せずに適切な判断をすることはできませんので、まずは住宅購入に際して利用するメリットを紹介します。
素人が気づきづらい問題の発見
ホームインスペクションにより、建物の構造耐力や雨漏りリスクに係る専門的な問題や欠陥が見つかることがあります。これにより、将来の予期せぬ修繕の費用や手間といったリスクを予防できます。建築の専門的な知識や経験がない人では気づけなかったことに、プロなら気づけることがあるということです。
修繕やメンテナンスの必要性の明確化
ホームインスペクションを依頼すると調査後に報告書が提出されますが、それにより、建物内外の修繕やメンテナンスが必要な部分が示されます。買主はこれを参考に、購入判断をすることや将来の修繕時期などを考えることができます。売主なら、売却する前に修繕しておくことや買主に前もって問題点を提示することで売った後の責任回避をすることができます。
安心感の向上
ホームインスペクションにより、対象物件の建物の状態が明らかになるため、買主は購入に対する不安を軽減できます。診断結果が良いものであれば、より前向きに検討しやすくもなります。住宅は人生のなかでも特に大きな買い物ですから安心感をプラスできることはメリットの1つとなっています。
住宅メンテナンス予算・計画に役立つ
建物の劣化状態・劣化部位を把握することにより、将来の修繕やメンテナンスにかかる予算計画の参考にすることができます。また、早期に補修すべきことか、まだまだ急ぐことのないことかアドバイスを得ることもできます。このことは、購入判断に活かすこともできます。
不動産会社がホームインスペクションは不要と言う理由
不動産会社がホームインスペクションは不要と言う理由はいくつかありますが、そのうちよくある理由を紹介します。
新築住宅で各種検査を受けているから
不動産会社は、新築住宅が一般的には建築基準法に基づく検査や瑕疵保険の検査などを受けており、構造耐力上の著しい問題がないために、ホームインスペクションが必要ないと考えていることがあります。
しかし、実際には、建築会社・ハウスメーカーが各種検査を受けていても、買主側が入れる検査によって多くの著しい施工不具合が見つかることが少なくないため、新築でも必要性が高いと言えるでしょう。
大手ハウスメーカー・不動産会社の物件
誰もが知るような大手ハウスメーカーや不動産会社が供給する住宅においては、施工品質が十分に担保されているという前提で、ホームインスペクションが必要ないと考えている不動産会社の人もいます。買主にも同じように考えている人も多いです。
しかし、大手であっても欠陥住宅問題がなくなっていないことから、企業規模や知名度だけで安易に判断するのはリスクがあるでしょう。大手のなかにもレベル差が小さくなく、施工不具合の調査依頼が絶えない会社もあるくらいです。
先に誰かに買われてしまうリスク
不動産仲介業者にとっては、売り出されている物件を誰が売るかは、営業マンや会社の成績に直結する大事な問題です。購入検討者がホームインスペクションを手配している間に他の誰かが先に売ってしまうのではないかと心配する不動産業界人は多いです。
そして、購入検討者にとっても同じように気に入った物件を先に他の人に購入される可能性があるので、急ぎたくなるものです。大事なことは、スピーディーに調査依頼して、事を早く運ぶことです。
建物に不具合が見つかれば買ってもらえない
ホームインスペクションを穂実施することで建物に大きな施工不具合や著しい劣化が見つかることもあります。そういった問題がないか調査するサービスですから、当然にそういう事例はたくさんあります。
売主や不動産仲介業者のなかには、そういった問題が見つかってしまうと、その購入検討者が買わないだけではなく、他の人にも買ってもらえなくなると考える人もいます。なぜならば、問題が見つかって売主や不動産仲介業者が知ることで、購入する人にはそのことを告知する義務が生じるからです。
ときには、売主が知っていた野ではないかと思われることを黙って販売していることもあるのですが、一度、第三者に見つかってしまうと黙っておくわけにもいかなくなります。
売買契約前の利用がおすすめ
一般的に、ホームインスペクションの利用タイミングは売買契約をする前と言われています。その理由はいかのとおりです。
売買契約前の交渉に活かせる
インスペクションで不具合が見つかった場合、売主に対して補修や価格などの面で交渉したいと考えることがあります。売買契約後では交渉が難しいため、契約前のタイミングで利用することがおすすめなのです。
購入前の不安解消
建物の状態をよく知ることで、完全にリスクを払拭できるわけではないにしても、リスクを減らすことはできますし、安心感を得られて購入に前向きになりやすいです。契約前に不安解消するためにも検討するとよいでしょう。
最悪は購入中止も可能
ホームインスペクションをすることで建物の不具合が見つかった場合、その見つかった内容次第では、購入を中止したいと考える人もいます。その不具合が補修すればよいと考える人と、見える範囲だけでそんなに問題があるなら、見えていない範囲の問題が心配だから買いたくないという判断もあるのです。
よって、いつでも購入を中止しやすい売買契約前の利用が推奨されるのです。
契約前のインスペクションは拒否されて、契約後ならOKと言われる事例も。そこは粘って交渉することをオススメです。簡単に引き下がっては足元を見られてしまう可能性もあります。
ホームインスペクションが必要ないはずがない
住宅を購入するとき、買主にとっては、大事な資産でもある建物の状態を把握することの必要性が分かったと思います。その調査結果次第では、購入中止をする人もいますし、大きな問題が見つかったものの購入する前提で売主と価格等の条件面の交渉をする人もいます。また、購入後のメンテナンス、優先リフォームの検討に活かす人もいます。
購入後に、すぐに建物を建て替えるのであれば、必要ないですが、建物を活用していく前提であれば、できれば売買契約をする前に依頼するように推奨します。
執筆者
全国で第三者の一級建築士がホームインスペクション(住宅診断)を行うアネスト。新築・中古住宅の購入時やメンテナンス時などに建物の施工ミスや劣化事象の有無を調査することができる。