築10年の中古住宅の状態とホームインスペクション
売りに出されている中古住宅の建物について築年数を見ていくと、新築後2~3年しか経過していないものから、築40年を超える古いものまでいろいろです。多くの物件があるなかで、まだ比較的に新しく、かつ新築時よりも価格が大きく下落している時期のものとして、築10年ぐらいの中古物件は人気が高いです。
そんな築10年の中古住宅に対して多くのホームインスペクションをしてきた経験から、その年代の住宅の特徴やホームインスペクションで注意して確認すべき点をご紹介します。
住宅にとって築10年とはどういう時期なのか
築後10年程度を経過した住宅がどういう時期にあるのか知っておくことは、中古住宅の購入やリフォームを検討する上で有意義なことです。
外壁・屋根などの劣化が心配される時期である
築10年ともなれば、多少は劣化が進行してきているものです。建物は、適切にメンテナンスしながら使い続けることが長持ちの秘訣なのですが、この時期は最初にしっかりとしたメンテナンスを考えた方が良い時期だと言えます。
特に建物の外部に注意しましょう。
・外壁シーリングの劣化
まずは、外壁のシーリングです。この頃の住宅の多くは外壁仕上げがサイディング貼りですが、サイディングの継ぎ目にはシーリングが施工されていることが多いです。そのシーリングが劣化してきて、ひび割れを起こしていることがよくあります。
シーリングのひび割れ箇所から内部へ雨水が侵入して雨漏りを起こすことがあるため、早めの補修を検討したいところです。
・屋根
屋根も外壁同様に劣化が進行している時期です。築10年で屋根材が割れることはあまりありませんが、色褪せすることは多いです。色褪せしても直ちに危ないというわけではありませんが、外壁の補修工事をするのであれば一緒に対処しておくのも1つの考え方です。
・バルコニー
最も心配されるのはバルコニーです。バルコニーは洗濯物を干すために頻繁に利用することもあると思いますが、利用が多いほどバルコニーの床面の劣化が進んでいることがあります。防水層に大きな傷・割れがあれば、雨漏りの原因となりますし、室内からバルコニーへ出るサッシの周りのシーリングが劣化していることもあります。
バルコニーに関わらず、サッシ周りは基本的に注意した方がよいですね。
ちなみに、屋根がフラットルーフであればバルコニーと同様に注意した方がよいでしょう。
新築時の問題に起因する症状が表面化している時期である
建物を新築した当時、その工事に問題があり施工不具合があったならば、関連する症状が出てきます。新築後すぐに症状が出てくることもありますが、数年後に出てくる可能性もあります。築10年も経てば、悪い症状がだいたい出ているはずなので、どのような症状があるのか建物全体を点検したいところです。
たとえば、新築当時の施工ミスで外壁内部の防水シートが破れていたとします。しかし、外壁材や屋根、関連個所のシーリング等の施工に問題はなかったので、壁内部への雨水の侵入がなく、結果的に室内への漏水が起こらないことがあります。
ただ、10年でシーリングの劣化が進行して外壁内部へ雨水が侵入してしまい、防水シートの破れ箇所から室内へ雨漏りしたという事例もあります。今まで表面化しなかった新築時の問題です。
また、地盤沈下の問題についても1つの判断ができる時期です。
地盤が弱くて地盤補強が不十分であれば、地盤沈下が起こって建物に影響が出てくることがあります。建物の沈下は新築後早い時期から出てくることが一般的であり、もし地盤と補強に問題があるならば、築後5年以内には影響が出ていることでしょう。
築10年を経過しても建物の傾きや基礎のひび割れなどの関連症状がないようであれば、現存する建物については地盤もしくは地盤補強を心配する必要が無いということが言えます。
築10年の中古住宅のホームインスペクション
新築から10年程度が経過した住宅に関しては、経年の劣化、経年以上の劣化という2つの劣化についての見極めが大事であることがわかります。ホームインスペクションの経験でわかった築10年の住宅に対する診断におけるポイントを説明します。
築10年にふさわしい劣化具合かどうか
どのような建物であっても、年数の経過とともに劣化が進んでいくものです。劣化していること自体が悪いことではありません。5年経過すれば5年分の劣化が進行し、10年なら10年分の劣化が進行します。
築10年の中古住宅をインスペクションしたとき、その経過年数としては一般的な劣化具合(経年劣化)であると判断されることもあれば、10年とは思えないほど劣化が進行していると判断されることもあります。後者の場合は問題だと言えるでしょう。
築10年の住宅に対して早急に百万円単位の費用がかかるようなメンテナンス工事が必須な状況であれば、それは劣化が進行しすぎているということです。例えば、外壁の張替えや屋根の全面葺き替えなどは10年では早すぎるでしょう。
建物外部のチェックポイント
最初にあげた外壁シーリングの劣化、屋根、バルコニーは外部における重要なチェックポイントです。ホームインスペクションをするならば、重点的に確認したいところなのです。しかし、実は屋根のインスペクションを満足にすることは困難であり、実施しているケースはほとんどないでしょう。
ホームインスペクション業者に依頼しても、屋根上へあがって調査することは基本的にはありませんので、確認できる範囲が限定的です。2階の窓から1階の屋根を見ることができることはありますが、最上階の屋根はほとんど見ることができません。
屋根については、ある程度のリスクを負ったままになることは理解しておきましょう。
室内の劣化にも要注意
建物の室内でも注意深く観察が必要です。室内壁が多少ひび割れしている程度であれば、それほど問題とは考えません。下地ボードの継ぎ目にそってクロスが避けてしまうことはよくあることで、それ自体は主要構造部に問題があるというわけではありません。
ただ、ひび割れの生じている箇所や方向、そしてその数によっては心配した方がよいこともあります。また、壁や床の傾きも参考になる情報ですから、どの程度の傾きであるか確認しておきたいものです。
他に注意して確認したい項目は、やはり雨漏り被害の可能性です。具体的には壁や天井などに染みが無いかチェックしていくのです。そして、できれば屋根裏の内部も細かく確認したいものです。
以上は、築10年を経過した中古住宅に対する最低限度のチェックポイントです。