地盤調査データが心配なら新築より中古マンションの購入がオススメ
2015年10月に入って横浜市のマンションにおいて、地盤調査データの改ざんと地盤補強工事の不足によって、マンションが傾いたという問題が大きく報道されています。新築当時の売主や地盤調査や補強工事をした企業は改ざん等があった事実を認めています。
マンションを購入した方やこれからマンションを購入しようとしている方は、地盤調査や地盤補強工事について心配している方は当然多いでしょう。マンションに限らず一戸建て住宅の購入者も同じように心配しているのではないでしょうか。
新築マンションを購入するときに、地盤調査データが改ざんされていないか、偽装されていないかを見破ることは無理だと考えた方がよいでしょう。それは建築の専門家にも難しく、地盤の専門家であっても容易ではないものです。
新築マンションを販売するときには、販売センターにおいてある設計図書を閲覧できますが、地盤調査データがその設計図書に掲載されていることが多いです。地盤補強工事の内容も確認できます。しかし、その調査結果や工事内容が事実であるかどうかをそれだけで見破ることは非常に難しく現実的ではないということです。
ちなみに、中古マンションであっても竣工図書を閲覧すれば同じように地盤調査結果や地盤補強工事の記載を見ることができます。竣工図書は、管理人室に保管されていることが多いですが、そこに無い場合は管理会社などにあるものの閲覧を検討しましょう。不動産仲介業者を介して購入の参考のために閲覧したいと申し出すると閲覧できることが多いです。
新築一戸建て住宅ならば、売主から地盤調査報告書と地盤改良工事報告書(補強した場合)を提示してもらいましょう。なかには、この重要なデータの提示を拒否する不動産会社もあり困ったものですが、これだけ世間を騒がしている状況でも同様に拒否するようであれば、購入すべきかどうか再検討すべきでしょう。
中古一戸建ての場合、売主がこれらの資料を保管していないことも非常に多いです。その場合、新築時の売主や設計事務所などで保管していないか確認する方法もありますが、経験的にはあまり期待できません。
地盤調査データの参考として、役所で近隣の調査結果を閲覧するという方法があります。これは必ず近隣のデータを確認できるというわけではないので、確実な方法ではありませんが、データがあれば1つの参考とすればよいでしょう。
さて、ここで地盤調査データの改ざんを見破ることが非常に難しいという点に話を戻しましょう。新築マンションや新築一戸建てにおいては、これらのデータを事実上、信じるしかないと言えますが、中古マンションや中古一戸建てについては別のチェック方法もあります。
それは地盤に起因するような影響が建物に出ていないか、そういった症状がないか建物を調査することです。建物の傾き、大きなひび割れ・亀裂などの症状が無ければ地盤の悪影響が無いと考えることができます。
「今は大丈夫でも、将来的に建物が傾くのではないか?」
という声も聞こえてきそうです。しかし、少なくとも地盤の問題が原因で、数年後に建物がはじめて傾きだすという可能性は低いです。
その理由は単純です。地盤の問題で傾くというのは、建物の重さで地盤が沈下してしまい、その結果として傾きなどが生じるわけです。建物の重さは新築時点と5年後、10年後は変化しません。そして、地盤も基本的には変化しません。
つまり、地盤沈下で建物が傾くのであれば、新築時から傾いていくのです。鉄筋コンクリート造の新築マンションが多いですが、非常に重いため、今回問題となっている横浜市の事例のようにひどいものであれば、建築している途中から地盤沈下と傾斜が始まっていたかもしれません。そうではなくとも、新築してすぐに沈下と傾斜が始まっていくものです。
よって、築5年を経過しても傾きや大きなひび割れ等の地盤と関連する症状が無ければ、その後も傾く可能性は低いと考えてよいでしょう。地盤以外の問題(建物本体の施工ミスなど)があれば別問題ですが、少なくとも地盤に関してはこのように考えることができます。
この考えは中古マンションだけではなく、中古一戸建てにも言えることです。地盤を心配して悩んでいるのであれば、この考え方も参考にされてはいかがでしょうか。
執筆者:荒井康矩(ホームインスペクションのアネスト)