ホームインスペクションをするために(ホームインスペクターの基本的な心得)

ホームインスペクターの心得

住宅の建築・リノベーション・売買に関する業界にいる人の間では、この数年でホームインスペクションやホームインスペクターという言葉に接する機会が急激に増えたことでしょう。今や住宅を買うときには、ホームインスペクション(住宅診断)をするのは、常識に近い状況になりつつあります。

しかし、実はホームインスペクションを適切に実行できる人は業界全体で見ても不足している状況です。特に「適切に実行できる」人と限定しているところがポイントです。

ホームインスペクションを適切に実行できる人

私が考える「ホームインスペクションを適切に実行できる人」とは、以下の条件を満たしている人です。

  • 建築士の資格保有者(アネストでは一級建築士に限定している)
  • 施工監理や設計監理の業務経験が10年以上
  • 上記経験の多くが住宅であること
  • 新しいことを素直に受け入れられること(先入観が強すぎないこと)
  • コミュニケーション能力が高いこと
  • 意見をはっきり言えること
  • 第三者の立場であること

上記はいずれも非常に大事な条件ばかりです。

建築士の資格ももたず、現場の経験も少ないものがホームインスペクションをしている事例がいくつもあり、この業界を当初から見てきたものとしては驚きもあり、残念でもあり複雑な気持ちです。

「家を売るために有利だから」という理由で、明らかに能力が不足している人がこの業務をしているケースが増えてきています。

新築建売のホームインスペクション

ホームインスペクションの依頼なら

第三者の一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)は、住宅売買・メンテナンスなどに役立つ専門的な技術サービスです。施工不具合や補修すべき劣化事象の有無をプロに診てもらえる。

先入観が強くないことが重要

まぁ、ここで愚痴っても仕方ないですし、愚痴を目的に今回のコラムを書いているわけでもありません。今回のコラムのポイントは、「新しいことを素直に受け入れられること(先入観が強すぎないこと)」です。この点に絞ってお話します。前振りが長すぎますね。

2003年にホームインスペクション(住宅診断)をアネストで始めてから、大変多くの建築士にお会いしお話してきました。アネストのパートナーとしてご活躍頂いている人や応募されてご縁のなかった人もそうですが、それ以外にもたくさんの建築士とお話する機会に恵まれました。

そんななかで、アネストのホームインスペクション(住宅診断)におけるチェックポイントや調査範囲についてお話すると「そんなところまで見ても意味ないでしょう」と言われることもあります。「そんなところを見ても施工ミスや不具合があるわけないのに、そこまで見ているというアピール、パフォーマンスではないか」といった類のご意見です。

しかし、現実には、「なぜこんなところで、このような施工ミスを起こすのか?」と驚くような事例はいくつもいくつも見つかっているものです。

たとえば、ユニットバスの点検口からのぞいたところに見えるダクト(排気用の配管)です。「ダクトなんかの何を見るの?」と思われる人もいるようなのですが、ダクトがそもそも取り付けられていない、ダクトが置いてあるだけでつなげられていない、はずれかかっているといった事例が何度も発見されています。

真面目な建築士が陥る

売主がちょっとのぞけば、すぐに見つかるようなミスなのに、なぜか第三者のホームインスペクション(住宅診断)によってようやく確認され、指摘を受けてから施工者が対応していることがあるのです。

建築中の住宅検査でも、筋交いの設置位置が間違っている、片がけの筋交いの方向が間違っているということもありますし、配管などを通すために筋交いに大きな穴をあけていたこともあります。

「そんなこといくら手抜きでもするはずがないでしょう」と考える業界人、建築士もいるのですが、現実に現場で起こっている問題です。

でも、「そんなこといくら手抜きでもするはずがないでしょう」と考える人が、ダメなわけではありません。実はそういった人はむしろ真面目に自分の仕事をやってきた人です。真面目に仕事をしておれば、「そんなはずがない」と考えるのも当然のことかもしれません。

多くの人にお会いしてきてわかったことは、真面目な人ほど「それは大丈夫だろう」と考えやすいということです。

ホームインスペクション(住宅診断)という仕事は、第三者性が非常に大事なわけですが、それはつまり自分が携わった住宅を診断するのではなく、他人が設計・監理・施工した建物を診断するということです。診断する人(ホームインスペクター)は、頭をからっぽにし、先入観を無くしてから、この仕事をして頂くとよいと考えています。

また、建築士の資格ももたず、また家を売るためにやるのではなく、独立系の設計事務所の建築士の人にはもっともっとこの仕事に興味をもってもらって、仕事の1つに取り込んでいってほしいと思います。

執筆者

アネスト
アネスト執筆担当
住宅購入や新築、リフォーム時のホームインスペクション(住宅診断)を行うアネストが執筆、監修している。
アネストのホームインスペクション

全国で第三者の一級建築士がホームインスペクション(住宅診断)を行うアネスト。新築・中古住宅の購入時やメンテナンス時などに建物の施工ミスや劣化事象の有無を調査することができる。