住宅購入時の地盤調査データの引き継ぎの重要性

住宅などの建築物を建てる前に行われる地盤調査の重要性と地盤調査データ(資料)の引き継ぎに関する問題点やアドバイスをまとめました。

住宅購入時の地盤調査データの引き継ぎの重要性

住宅地の地盤調査とは

地盤調査とは、地盤の強度や性質、地層などを調査するもので、この地盤調査結果と建築する建物プラン、さらに周辺状況などから地盤改良や地盤補強の必要性やその改良・補強内容を検討するため、住宅などの建築物を計画する際には非常に重要な役割を果たします。

住宅地で行われる地盤調査の多くは、スウェーデン式サウンディング試験(略称:SS式)と言われるもので、先端がスクリュー上に尖った杭状の鉄の棒(ロッド)を地面から地中へと垂直に、且つ回転させながら突き刺していきます(はじめは回転させずにそのまま重みのみで沈めていきます)。

地盤調査は、前述のように建築計画に必要なものですから、一般的には住宅を建築する前に行われます。しかし、既存の住宅(中古住宅)に地盤に起因すると思われるような不具合、地盤沈下などの症状が確認されたときにも地盤調査が行われることもあります。

既存の住宅で地盤調査を行う場合には、前述の地盤調査方法では建物の真下の地盤を調査できないため、別の方法がとられます。

地盤調査データの重要性

地盤改良工事や地盤補強工事の有無やその内容は、地盤調査の結果(データ)と建物プラン、周辺状況から慎重に検討するものであると述べましたが、住宅(建物)の安全性を左右する大事な地盤改良や補強工事の決定に強く影響するものですから、地盤調査やその調査結果(データ)がどれだけ重要なものであるかはわかりますね。

最近も、地盤調査データの偽装が世間を騒がせていましたが、その事例でも実際に地盤補強工事が不十分で大きな沈下が起こっていました。

地盤調査資料(データ)があっても、設計者や施工者、施主による地盤改良や補強工事の判断ミスがあれば、沈下が起こり、建物の傾き・ひび割れなどの問題を引き起こすことにつながりますので、調査結果と判断が大変重要なものとなります。

住宅購入時に地盤調査資料をもらえないことがある

では次に、新築・中古・土地の物件種別ごとに地盤調査資料の入手に関して解説します。

新築住宅購入時の地盤調査資料

新築住宅を購入するときには、必ず地盤調査資料(データ)を引き継ぐようにしましょう。建売住宅であれば、売主から地盤調査資料を受領し、長く保管しておくべきものです。売主から買主へ引き継ぐことは当然に必要なことですが、売主によってはこの当然のことをしないこともあります。

買主は売買契約の前に、地盤調査資料を引き継げるかどうか確認しておくとよいでしょう。引き継ぎを拒否するようであれば、この大事な資料を買主へ引き継がないという不動産会社から高価な住宅を購入すべきかどうか慎重に検討すべきです。

地盤調査資料の確認は、できれば購入前(契約前)がよいです。地盤調査結果と地盤補強プランに問題がないか確認してから購入判断できれば安心材料が1つ増えることになります。内容が専門的でわかりづらいですから、ホームインスペクション(住宅診断)を利用するときに、その会社に相談するのも1つの方法です。

中古住宅購入時の地盤調査資料

中古住宅の購入に際しても地盤調査資料は確認しておきたいものです。しかしながら、売主が新築当時の地盤調査資料を保管していないことは非常に多いです。

保管していない理由は、単純に紛失したということもありますが、新築で購入したときに売主や施工会社・ハウスメーカー等から引き継いでいないということもよくあります。最近の新築住宅の売買では、引き継がれることが多いですが、昔はそうでもなかったのです。

中古住宅を購入するときには、不動産仲介業者を介して売主に地盤調査資料の有無を確認してもらい、有ればもらうようにしましょう。

土地(更地)を購入時の地盤調査資料

更地の土地を購入するときは、地盤調査資料の入手時期が問題となることが多いです。更地の土地を購入するということは、買主は土地購入後に建物を新築するわけですから、当然ながら地盤は気になるところです。

地盤調査の結果次第では、地盤改良・補強工事に多くの予算を割かなければならないこともあるため、土地の買主としては購入前(契約前)に売主側で地盤調査をして、その調査結果を示してほしいところです。地盤改良・補強工事には百万円単位の費用がかかることもよくあることです。

しかし、土地の売主が地盤調査をしていることは意外と少ないものです。土地の売主が一般個人である場合、事前に地盤調査をしておくことはほとんどありません。また、不動産会社が売主である場合でも、地盤調査をしていないことは非常に多いです。

つまり、建築時に要する地盤関係の費用が不透明なまま土地の購入を判断しなければならないという点で判断を難しくさせています。

地盤補強の施工も確認したい

地盤は資料だけではなく、施工中も確認したい

地盤に関しては、本当は地盤調査資料(データ)の確認だけでは不十分です。地盤の改良・補強工事をしている場合にはその資料(地盤改良施工報告書など名称はいろいろある)も入手して、どのような対応をしているか確認しておきたいところです。

また、その報告書の通りに施工しているか現場でも確認したいところですが、地盤改良・補強工事は地中であることから、現実的に施工後に確認することは困難です。新築住宅で、これから施工するのであれば、改良工事中に第三者の立会い検査を入れるという方法もあります。

この点についても、ホームインスペクション(住宅診断)を利用するときに、相談してみてもよいでしょう。

執筆者

アネスト
アネスト執筆担当
住宅購入や新築、リフォーム時のホームインスペクション(住宅診断)を行うアネストが執筆、監修している。