新築も中古もホームインスペクションは無駄と言うのは嘘。必要ないわけがない理由を解説

ホームインスペクションは無駄と言うのは嘘

ホームインスペクションは、新築にも中古住宅にも活用されていますが、不動産会社や建築会社の担当者によっては、「ホームインスペクションはやっても無駄です」とか、「インスペクションなんて必要ないですよ」と購入者に対して説明しているケースが絶えません。

一方で、ホームインスペクションを依頼すると決して安くはない費用がかかることから、不要なものなら依頼せずに出費を抑えたいと考える買主もいます。

本当にホームインスペクションをすることが無駄なことなのか、必要ないことなのかを知るためのキーポイントは、以下の事実を把握することにあります。

キーポイント

  • 無駄だと言う人が利害関係者ではないか
  • インスペクションが無駄という根拠が正しいか
  • ホームインスペクションでどのような効果を得られるか

この3つを理解できるように、ホームインスペクションの基礎知識と、不動産会社が無駄だと言う理由と本音、無駄ではない理由、インスペクションの指摘事例を紹介します。

ホームインスペクションは新築にも中古にも使える

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ホームインスペクションは、新築や中古住宅を売買するときに利用されることが最も多いですが、売買時以外にも、リフォームするときや、自宅の定期点検などにも活用されています。そんなインスペクションの基礎を紹介します。

ホームインスペクションは建物を調査すること

ホームインスペクションは、住宅診断や建物調査とも呼ばれていますが、要は、住宅の建物を対象とした調査業務です。建物の構造耐力や防水・断熱などの基本性能に関わる問題点がないかどうか、専門技能を持つ専門家(=ホームインスペクターなどと呼ばれている)が、現地で目視・計測などによって調査するサービスです。

新築住宅では施工不具合の有無を調査

新築住宅においては、新築工事における施工不具合の有無を調査します。たとえば、外壁材の継ぎ目や開口部周りに防水上の懸念がある割れや隙間がないか、床や壁の精度(傾きの程度)がどうか、建具を含めた設備の動作状況に問題ないかといったことを診断します。

中古住宅では建物の劣化事象の有無を調査

中古住宅においては、建物の各部位で構造耐力や防水性能などに悪影響を及ぼす著しい劣化事象の有無を調査します。たとえば、床下浸水していないか、雨漏り跡がないか、傾いていないか、断熱材が落ちていないかといったことを診断します。

また、中古住宅にも、新築した当時の施工不具合が残ったままとなっていることも多いため、そういった問題の有無も一緒に確認します。

不動産会社がインスペクションを無駄だ、必要ないと言う理由と本音

不動産会社の本音

ここまでに記載したホームインスペクションに関する基本的な説明だけを見ても、建物の状態把握や購入判断のために役立ちそうだし、必要だろうと感じる人は多いでしょう。しかし、不動産会社が「インスペクションは無駄だ」「必要ない」などと言う現実もあるので、このことを解説しておきます。

不動産会社は住宅売買の利害関係者

住宅購入を進める中で、対象物件を媒介(仲介)する不動産会社や対象物件の売主である不動産会社と接する機会は多いでしょう。彼らは、売主であっても仲介であっても、売ることによって売上・利益を得るわけですから、売りたいと考えるのは当たり前です。

一方で買主としては、何でもよいから買えれば良いというわけではないですね。自分たちにとって適切な物件を購入したいわけで、欠陥住宅は買いたくないでしょう。

本来なら、不動産会社も欠陥住宅を売るとその後のクレーム対応などで大変なことになりうるため、そのような住宅は売りたくないはずですが、利益を得るために、欠陥の有無をあまり考慮せず、販売することが多くなっています。

また、営業担当者は、自分から買って欲しい(営業成績や歩合給のため)と考えるものですし、買主の都合が優先されるとは限りません。つまり、利害が対立している部分があるわけです。

利害関係者が言う、無駄とか必要ないという意見を安易に信用してはいけないと知っておきましょう。

不動産会社が不要だと言う理由として挙げること

ホームインスペクションを無駄とか必要ないとか言う不動産会社は、その理由を説明するはずです。その代表的な理由は以下のとおりです。

  • 建築基準法記事の完了検査を受けている
  • 瑕疵担保責任保険の検査を受けて保険加入している
  • 住宅性能評価を制度の検査を受けている

しかし、これらの検査は、簡単なものであり、これらでは防ぎきれていない施工不具合が大量にあります。

Googleで検索すれば、欠陥問題に悩む人のブログや動画などがたくさん出てきますが、そのうちの多くの住宅で、上の検査のいずれか、または複数を利用しているのです。それでも、問題が起こっているという事実に目を向けるべきです。

不動産会社が無駄だと言う本音

それでは、なぜ不動産会社がホームインスペクションを無駄だと言うのでしょうか。その最大の理由は、ホームインスペクションを実施して得られる調査結果によっては、その物件の購入を中止する人がいるからです。

新築建売のホームインスペクション

ホームインスペクションの依頼なら

第三者の一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)は、住宅売買・メンテナンスなどに役立つ専門的な技術サービスです。施工不具合や補修すべき劣化事象の有無をプロに診てもらえる。

ホームインスペクションが無駄ではない理由

ホームインスペクションが無駄ではない理由

ここでは、ホームインスペクションを実施することが無駄ではない理由、つまり利用価値が高い理由を紹介します。

指摘事項が見つかる住宅が多い

ホームインスペクションを実施すると、実に多くの指摘事項が見つかります。対象の住宅によって、見つかる量にも重大さにも大きな違いがありますが、何も見つからない住宅の方が少ないくらいです。2004年よりホームインスペクションをしている実勢豊富なアネストの調査データによれば、指摘の頻度は以下のとおりです。

レベル見つかる頻度
軽微な指摘(簡単にすぐに補修等の対応が可能なもの)ほとんどの現場で指摘がある
中程度の指摘(放置すると問題だが補修等の対応が容易なもの)5~10回の検査に1現場程度
重大な瑕疵の指摘10~20回の検査に1現場程度
見つかる指摘のレベルと頻度
引用元:アネスト「住宅診断(ホームインスペクション)の指摘事例」

思ったより中程度や重大な指摘が多い印象を持ちませんか。

些細な問題が見つかる程度なら安心感を得られる

軽微な指摘が見つかる住宅は非常に多いですが、そのような些細な問題が見つかる程度であれば、その物件を購入しても問題ないかと考えることができる、つまり安心感を得られる人も多いです。大きな問題がないなら、安心してマイホームを購入できることから、無駄ではないことになりますよね。

ホームインスペクションのメリットが無駄ではない理由でもある

ホームインスペクションを利用することによって得られるメリットは、インスペクションが無駄ではない理由にもなります。代表的なメリットを紹介します。

  • 建物の状態を把握して購入判断の参考にできる
  • 補修・メンテナンスの参考にできる
  • 早めの修繕対応で長期的にコスト削減できる
  • 購入を決断できる(判断の後押しになることがある)
  • 調査時点の建物の状態が将来のトラブルの参考になることがある

ここで挙げたメリットは代表的なものですが、他にも不動産活用時のリスクヘッジ、相続時の建物状態の把握などのメリットを得られることがあり、幅広く利用されています。

事例を知れば、ホームインスペクションが無駄とか必要ないわけがないと理解できる

最後に、ホームインスペクションが無駄とか、必要ないなどと言われることがおかしいことを明らかにするため、診断で実際に見つかった施工不良や著しい劣化の事例を紹介します。

雨漏り

雨漏り

屋根裏の調査で見つかった雨漏りが疑われる水染みの跡です。

シロアリ被害

シロアリ被害

床下で見つかったシロアリによる被害(蟻害)、蟻道です。

断熱材の著しい隙間

断熱材の著しい隙間

屋根裏で見つかった断熱材の著しい隙間です。

床下漏水

床下の漏水

床下で見つかった漏水の状況です。

排水管の勾配不足

床下で見つかった排水管の勾配不足です。

窓枠のビス忘れ

窓枠の留め付けビスの施工漏れです。ここで紹介するなかでは、比較的軽微な指摘です。

天井裏のカビ

天井点検口を開けたときに点検口の裏や断熱材に付着したカビが見つかった状況です。

雲筋交いの著しい割れ

屋根裏で見つかった雲筋交いの著しい割れです。

基礎のひび割れ

床下で見つかった基礎底盤の構造耐力に影響があるひび割れです。

外壁材の割れ

外壁で見つかった防水性等に影響があるひび割れです。

このような不具合が見つかることがよくあるにもかかわらず、安易に無駄とか、不要だとか言う不動産会社や建築会社の担当者を信用しないように気を付けましょう。

担当者によっては、過去に担当した物件でこのような指摘事例が上がっていることを知っていながら、堂々と「ホームインスペクションは無駄です」と言うこともあるので、驚きます。ご自身で慎重に判断するよう心掛けましょう。

執筆者

アネスト
アネスト執筆担当
住宅購入や新築、リフォーム時のホームインスペクション(住宅診断)を行うアネストが執筆、監修している。