耐震診断とホームインスペクションの違い

耐震診断とホームインスペクションの違い

大きな地震が起こるたびに住宅の耐震性が話題になります。今年も熊本地震の後、住宅の耐震について多くのメディアで取り上げられました。住宅、とくに中古住宅を購入する多くの人にとって、耐震性に対する関心は高いです。

ここでは、建物の耐震性を診断する耐震診断について説明し、これと似たものとしてホームインスペクションについても説明して、両者の違いを解説します。

耐震診断とは

耐震診断とは、建物の有する耐震性を確認するもので、一般診断(もしくは簡易診断)と精密診断と呼ばれるものがあります。多くの木造住宅においては一般診断が採用されています。

耐震診断ですることを簡単にいえば、建物を現地調査して耐震性に関わる様々な情報を確認することとその建物の設計図面を見て耐震性に関わる情報を拾い出していき、その情報から耐震性を計算していくものです。この計算作業は、専用のプログラム(ソフト)を活用することが一般的です(一部で手動計算する人もいます)。

現地調査で行うことは、主に建物の劣化具合の確認です。たとえば、基礎のひび割れの有無や建物の傾きの有無などがそうです。また、建物の仕様も現地で確認していきます。たとえば、屋根材の種類などの確認です。

また、設計図面の確認では、建物形状や柱や耐力壁の位置などを確認していきます。現地で建物仕様を確認すると書きましたが、図面や仕様書で確認することもあります。耐力壁などは現地でも確認しますが、見えない部分も多く現地だけで確認することは困難であるため、図面と現地の両方で判断していくことになります。

但し、耐震診断は実施する人や会社によって、ある程度は判断の仕方に相違があるため、結果には誤差が出てきます。誰が実施しても全く同じ結果になるというわけではありません。もともと、見れない部分があり、確実な情報を得られない前提で実施するものですから、解釈や判断によって多少の差異が出るものだと理解しておきましょう。

ホームインスペクションとは

次にホームインスペクションについて説明します。これは、住宅診断と呼ばれることも多いです。

中古住宅においては建物の劣化具合や新築当時から残っている施工不良の有無などを確認していきます。新築住宅においては施工不良の有無を確認していきます。

ホームインスペクションでは、耐震性を計算する作業は含まれていないため、耐震性について詳しく確認したいならば耐震診断の利用を考えなければなりません。但し、新築住宅は着工前の建築確認申請手続きにおいて、耐震性も含めて確認を受けていると考えることができますから、耐震診断は中古住宅において利用されるものとなっています。

ホームインスペクションと耐震診断の違いは、耐震性を数値で出すかどうかということもありますが、耐震性以外の点まで見るか見ないかという違いが非常に大きいです。ホームインスペクションでは、耐震性に関係ない部分が対象項目になっています。

ひび割れや傾きなどの劣化症状が確認された物件で、その程度であれば耐震性には大して影響がないので心配ないと判断されたとしても、長く住み続けていくためには、早めに補修等の対応をした方がよいということもあります。そういったところまでアドバイスをもらえるのが、一般的なホームインスペクションのよいところです。

但し、決められた項目のチェックだけをして、その次のアドバイスをしない業者もあるようなので(特に不動産会社と提携している会社に多い)、単に検査して終わりではなく、その後のアドバイスまでもらえるかどうかは依頼前に確認すべき点です。

耐震診断に必要な図面が無いことが多い

中古住宅において耐震診断は大事なものですが、実施する上でよく問題となることがあります。それが、図面不足です。現地で建物を調査して得る情報と図面から得る情報のいずれもが大切なのですが、図面が無い場合には必要な情報が不足して、耐震診断ができないことがあります(もしくは無理に実施してもほとんど意味がないこともがあります)。

どういった図面があるのか確認したうえで、耐震診断をする業者と実施すべきかどうか相談するとよいでしょう。

ホームインスペクションは図面無しでも実施可能

耐震診断には図面の存在が大事であると述べましたが、ホームインスペクションにおいてはどうでしょうか。

実はホームインスペクションの実施のためには、図面がなくても問題はありません。ホームインスペクションは、現地調査で目視できる範囲において劣化具合や施工ミスを確認していくものであり、図面を審査するわけではありません。よって、図面がなくても実施可能なのです。

とはいえば、図面があった方がよいとも言えます。ホームインスペクションで特に大きな指摘がなければよいですが、何か心配される症状が見つかった場合、その原因や考えられる影響などを推察するためには図面があった方がよいということもあるからです。

そのため、結果的に使用するかどうかは別として、図面が用意できるならば、できる限り用意しておいた方が無難でしょう。また、購入する物件のホームインスペクションであれば、調査に図面を使用しなかったとしても将来のリフォームやメンテナンスなどのために、図面を入手することをお勧めします。

中古住宅の購入前なら、ホームインスペクションと一緒に耐震診断の利用もオススメ

これから中古住宅を購入するのであれば、ホームインスペクションと耐震診断の両方を利用することも考えてみてください。それぞれの特徴を考えれば、両方の結果が購入判断に役立つことは間違いありません。

また、同時に同じ会社で実施できれば、料金も安く抑えることができるでしょう。なぜならば、ホームインスペクションと耐震診断は現地で確認する項目・範囲に重なる点が多いからです。

建物の築年数によっては、住宅ローン控除を受けるために耐震診断を利用して耐震基準適合証明書を入手することが役立つこともあります。これについても、診断業者に相談するとよいでしょう。

執筆者

アネスト
アネスト執筆担当
住宅購入や新築、リフォーム時のホームインスペクション(住宅診断)を行うアネストが執筆、監修している。