新築工事のホームインスペクションを実施すべきタイミング

新築工事のホームインスペクションを実施すべきタイミング

新築住宅の建築工事では、様々な施工ミスが見られます。その原因は、建築会社の基礎能力によるもの(技術的・知識的な問題)もありますし、管理体制・意識の問題もありますし、また勘違い・誤解によるものもあります。

こういった新築工事の施工ミスを抑制するために、買主や施主が第三者に建築中の住宅検査(ホームインスペクション)を依頼することは多いです。ここでは、新築住宅を建築するときのホームインスペクションを利用するならば、工事のどのタイミングで検査してもらうとよいか解説します。

新築住宅のホームインスペクションとは何か

ホームインスペクションとは、住宅診断や住宅検査とも呼ばれているものですが、建物の施工品質や劣化状態を現場で確認していくものです。新築住宅の建築中に行われるホームインスペクションは、主に施工の品質をチェックする目的で実施されています。

新築住宅の住宅検査(ホームインスペクション)は多種多様

新築住宅では、建築会社や売主によってもホームインスペクションに似たことが実施されています。建築基準法に定められている中間検査や完了検査や、瑕疵保険に加入するために必要な検査、住宅性能表示制度を利用するための現場検査などです。

売主や建築会社は、これらを第三者検査として買主や施主に説明することが多いものの、継続的に不動産会社や建築会社が発注し続ける関係でもあり、また以下の理由にもよって一般的な消費者が求めるレベルの検査が行われているわけではありません。

これらの検査は、施工品質を細かくチェックして施工ミスを抑制するというよりも、図面通りのプランになっているか、各基準に適合するプランになっているかを確認することが主となっており、施工ミスを細かく指摘して補修させるという役割を十分に担えていません。

なぜ、買主も住宅検査(ホームインスペクション)を依頼するのか?

第三者のホームインスペクションを2003年より行ってきたアネストの検査経験でも、前述した売主側・建築会社側の第三者検査で見逃されている施工ミスを大量に指摘してきました。たまに指摘事項が生じるというものではなく、大量に指摘事項が生じているのです。

もちろん、対象となる住宅によって品質には大きな差があります。ほぼ指摘の無いまま完成を迎える良い住宅もありますし、逆に着工から完成までの間の検査で、毎回のように多くの指摘をせざるをえないひどい住宅もあります。

つまり、売主や建築会社が入れる第三者検査では、買主や施主といった消費者が安心して住まいを取得することができないため、買主などが自らホームインスペクションを依頼するようになったのです。

不動産会社や建築会社がいくら第三者検査や社内検査により安全だとアピールしても、現実にはいつまでも無くならない欠陥住宅問題を考えれば、買主が依頼するのも当然のことかもしれませんね。

住宅検査(ホームインスペクション)すべき大事な工程 

新築工事は、着工してから完成するまでに、短いものでも50日程度、長いものであれば半年程度もかけて工事します。この間、毎日、現場に張り付いて検査するわけにもいきませんので、検査すべき工程を選んで現場に入ってもらわなければなりません。

それでは、買主が住宅検査(ホームインスペクション)を利用すべき新築工事の工程とはどのタイミングでしょうか。ここからは、この点について説明します。

基礎配筋工事のホームインスペクション

最初に大事な工程としてあげるのは、基礎配筋工事です。完成した建物で基礎と言えば、コンクリートを思い浮かべると思いますが、基礎コンクリートの内部には鉄筋が組まれています。これを配筋と言います。

基礎配筋工事

大変古い住宅では、無筋コンクリートといって基礎に鉄筋がありませんでしたが、今の住宅では必ず鉄筋があります。基礎は、鉄筋が引張り力に耐え、コンクリートは圧縮力に耐えるという役割があり、どちらも重要なものです。

その住宅の仕様通り、その他の基準通りに基礎配筋が施工されているか、確認することは、その性能を発揮するために大事なホームインスペクションです。使用される鉄筋の径や鉄筋と鉄筋の間隔、補強筋など数多くの重要な検査がこのタイミングでできるものですから、必ず実施してもらうようにしましょう。

基礎コンクリート打設時のホームインスペクション

前述したように、基礎のコンクリートも圧縮力に耐えるという重要な役割をもっています。コンクリート強度に悪影響のあるような施工にならないか、第三者に検査してもらうべき工程です。可能ならば、コンクリートを打設するタイミングでホームインスペクションを実施し、打設するときの管理状態や施工の仕方を見てもらうとよいでしょう。

コンクリート打設工事

工程にもよりますが、打設の直前や打設後にアンカーボルトの設置状態はよく確認してもらってください。アンカーボルトの施工ミスにより、基礎の上に施工されている建物本体部分と基礎のつながりに問題が生じている住宅は意外と多く、この問題に直面しても見て見ぬふりする職人も残念ながら多いです。

構造躯体および金物の設置工事のホームインスペクション

多くの人にとってイメージしやすいことですが、当然のことながら構造躯体は非常に大事な工程です。基礎の上に土台、柱や筋交いなどの構造部、屋根材もそうです。これらの主要な構造部分については、必ず買主側の第三者検査が必要です。

構造躯体・金物設置工事

不動産会社や建築会社が入れる検査では、筋交いの位置間違いや金物の設置忘れを見逃していた事例もあります。1つずつ丁寧に時間をかけて検査すれば、そのようなことは起こらないはずのですが、不動産会社等の入れる検査は所要時間が短く(10~20分程度と非常に短い)、細かな検査を求めても無理があるでしょう。

ちなみに、この検査は、構造金物を設置したタイミングで行ってもらうようにしましょう。金物が適切に施工されていなければ、耐震性の面で大きなマイナスとなりえるものですから、大事なことです。

防水工事のホームインスペクション

住宅が完成して居住し始めてから多くの人が悩まれる可能性のある問題の1つとして、雨漏りがあります。建物が古くなって著しい劣化とともに雨漏りが生じることが多いようい思いがちですが、実際には新築直後に雨漏り被害に合う人も多いです。新築住宅の雨漏り検査を今までに何度依頼されたかわからないぐらいです。

防水工事

新築するときに防水工事をきちんとしていないと後で大変なことになることは、多くの住宅を見てきた経験からよくわかっています。

防水工事に関するホームインスペクションは、外壁面・バルコニー・屋根面において重点的に実施したいものです。外壁面の開口部(サッシや配管の貫通部など)から漏ることが多いのですが、施工方法自体に問題があることもあれば、施工品質に問題があることもあります。

丁寧に施工したつもりでも、施工方法が間違っていれば話になりませんね。驚くことに、適切な施工方法をわかっていない下請け業者もありますから、防水工事のホームインスペクションは必須だと考えた方がよいでしょう。

断熱工事のホームインスペクション

そして、断熱工事のホームインスペクションです。住宅の断熱は、建物を断熱材ですっぽり覆うようなものです。断熱材で覆ってしまうことで、断熱効果を上げ、その内側では温度変化の面で快適な生活ができるようになります。

断熱工事

冷暖房効率がよくなるため、省エネルギーであり、電気代を抑えることもできる重要なものですね。

しかし、この断熱工事は、実は住宅を建築する過程のなかで最も施工ミスが多く、指摘が多く上がりやすい工程でもあるのです。

施工の下請け業者の意識・知識によっては、隙間だらけのひどい施工をされたり、必要な箇所の断熱材がすっぽり抜けていたりすることがよくあるのです。それを現場監督や工事監理者がきちんと確認して是正させればよいのですが、現場監督にはその能力に欠ける人が多く、工事監理者はそもそもほとんど現場に来ないということが多いため、断熱工事の施工ミスがそのまま放置されることが多いのです。

完成時のホームインスペクション

住宅が完成したときには、一般的には買主が引渡しを受ける前に検査する機会があります。一部の建築会社などでは、施主から求めないとその機会を設けないケースもあるので注意してください。

この完成時の検査もまた非常に大事なもので、施工の不備などを指摘して補修を求めるための最後の正式な機会です。この機会の後に何か見つかれば、指摘して補修してもらえることもありますが、対応に差が出ることもありますから、要注意です。

以前から、建築中に第三者のホームインスペクションを依頼しない人でも、この完成時だけは依頼するという人は多かったです。つまり、元々消費者の意識も高いタイミングではあるのですが、それでも得意に気にせず、自分たちでも簡単にしかチェックしないケースもあるため、意識を変える必要があるでしょう。

まとめ

ここで挙げた建築中に実施すべきホームインスペクションの6つのタイミングは、最低限度必要なものです。これだけで十分だというわけではありませんので、誤解しないようにしましょう。

不動産会社や建築会社によっては、買主が入れるホームインスペクションへの対応を面倒だと考えて、依頼中止を働きかけることがあります。そして、売主や建築会社との関係悪化を心配して中止する人も一部で見られます。そういうときに限って、建築の途中や完成後の不具合で相談を受け、対応が後手を踏んでしまうことがあるので、遠慮しすぎないことが大事です。

新築建売のホームインスペクション

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第三者の一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)は、住宅売買・メンテナンスなどに役立つ専門的な技術サービスです。施工不具合や補修すべき劣化事象の有無をプロに診てもらえる。

執筆者

アネスト
アネスト執筆担当
住宅購入や新築、リフォーム時のホームインスペクション(住宅診断)を行うアネストが執筆、監修している。
アネストのホームインスペクション

全国で第三者の一級建築士がホームインスペクション(住宅診断)を行うアネスト。新築・中古住宅の購入時やメンテナンス時などに建物の施工ミスや劣化事象の有無を調査することができる。