中古住宅のホームインスペクションの調査時の立会いは誰がするのか

中古住宅のホームインスペクションの調査時の立会い

中古住宅を購入する人から、ホームインスペクションのお見積りや日程調整などの問合せが入ったとき、その場に立ち会うべき人について質問されることがよくあります。初めて利用するインスペクションですから、そういったことも確認しておかないとわかりづらいものですよね。

そこで、ホームインスペクションの実施時、つまり調査するときに誰が立会うべきか、依頼者や不動産会社が立会いできなくても問題ないかなど、現地立会いに関する疑問に回答・解説します。

中古住宅のホームインスペクションとは?

中古住宅に対するホームインスペクション(住宅診断)は、主に住宅を売買するときに、買主または売主の依頼によって実施されることが多いです。

専門家が調査して、建物の構造耐力や建物性能(防水性・断熱性など)に関わる不具合・劣化について依頼者へ報告するものですが、この調査結果を参考にして、買主なら、購入するか、補修要求するかといったことを考え、売主なら補修してから売るか、その状況を告知した上でそのまま売るかといったことを検討するのです。

また、購入した後の物件や相続した住宅に対して利用して、リフォーム工事やメンテナンスに活用する人も増えています。専門性が必要な分野だけに、プロのサポートを受けて大事な判断をしていこうとする人は非常に多くなっているのです。

ちょっと一言

ホームインスペクションは、戸建でもマンションでも利用されていますが、圧倒的に戸建て住宅にこそ多く利用されています。

中古住宅のホームインスペクションに立ち会いする候補者

中古住宅の売買に際して、ホームインスペクションの現場に立ち会いする可能性がある人について、紹介します。この全てが立会うとは限らないですが、まずは、候補者を把握しておきましょう。

ホームインスペクター(住宅診断士)

当然のことながら、ホームインスペクションを行う専門家であるホームインスペクター(住宅診断士)が立会いします。必ず、調査開始時から終了時まで、このインスペクターを中心として現場が動いていくことになります。建物の劣化事象やときには新築当時から残されている施工不具合などを確認していく診断内容です。

ちなみに、中古住宅の売買時に行うホームインスペクションは、既存住宅状況調査技術者の講習を修了した建築士が行います。

既存住宅状況調査方法基準(平成29年国土交通省告示第82号)で、既存住宅状況調査の内容や方法、調査する者として既存住宅状況調査技術者のことなどが規定されており、これに則ってホームインスペクターが調査しているわけです。

不動産会社(仲介業者)

中古住宅の売買に際して行われるホームインスペクションでは、その物件を仲介(媒介とも言う)する不動産会社の担当者が立会うことも多いです。売主が、売却に出す前に行う場合は立ち会わないことが多いですが、販売活動中やその直前に行う場合、立会うことが多いです。

仲介業者にも2種類あり、売主側の業者である場合と、買主側の業者である場合です。売主がホームインスペクションを依頼するなら売主側の業者が立会いし、買主が依頼するなら買主側の業者が立会いすることが多いです。買主が依頼する場合は双方の仲介業者が立会うこともあります。

売主(所有者)

中古住宅の取引において、多くの場合、売主はその物件の所有者です。その売主が、居住中の家である場合、ホームインスペクションの実施時には、売主が立会うことが一般的です。家具や荷物などもたくさんある状況でもあり、当然のことです。

ただし、一部のケースでは、居住中であっても鍵の管理を不動産仲介業者に任せて立会いされていないこともあります。

また、対象物件に売主が居住していない場合、売主が立会いしないことが多いです。その場合は、不動産仲介業者が売主の承諾を得て代わりに立ち会うことが一般的です。

そして、売主が不動産会社であるときについても説明しておきます。中古住宅では、以前の所有者から物件を買い取って再販売しているケースもよくあります。その場合、売主である不動産会社が別業者に仲介してもらっているなら立会いしないことが多いです。一方で、自社で直接販売している、つまり仲介業者を入れていない場合は立会いすることが多いです。

買主

買主が、ホームインスペクションを依頼する場合、その依頼者である買主が立会うことが多いです。ただし、売主や不動産会社、ホームインスペクターなどとスケジュールが合わないときや、遠方の物件で気軽に現地へ行けない場合などでは、買主が依頼者であっても立会いしないケースもあります。

依頼者であるならば、調査内容とその結果をよく理解しておきたいはずですから、そういう意味では調査時に立会いして、担当のホームインスペクターより説明を受けたり、質疑したりする方がお勧めです。

賃借人

中古住宅の場合、対象物件に居住しているのが、所有者とは限りません。物件によっては、賃借して居住している人もいます。つまり、賃貸中の物件ということですね。

その場合、売主ではなく、その賃借人(=居住者)が立会いします。事前に、賃借人のスケジュールと調整してインスペクションの実施日を調整しなければなりません。

リフォーム・メンテナンス前のホームインスペクションへの立会い

中古住宅では、所有するオーナーが売買に関係なく、リフォームや建て替えの検討のため、またはメンテナンス・修繕の参考とするために、ホームインスペクションを依頼することもよくあることです。

その場合、依頼者は所有者となるわけですが、調査内容とその結果の把握・理解のため、必ず、調査時に立会いするようにしましょう。大きな問題点の把握、気になる箇所を診てもらっての相談ということを考えれば、現地立会いする方が断然よいですから、きちんと日程を合わせて立ち会ってください。

新築建売のホームインスペクション

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第三者の一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)は、住宅売買・メンテナンスなどに役立つ専門的な技術サービスです。施工不具合や補修すべき劣化事象の有無をプロに診てもらえる。

調査時の立会い者に関する疑問と回答

調査時の立会いに関する疑問を持つ人

ホームインスペクションを依頼しようとしたところで、現地立会いする人のことで、課題があがることがあり、よく相談を受けることがあるので、それをここで回答と共に紹介しておきます。利用するときの参考としてください。

不動産会社(仲介業者)が立会いできなくても大丈夫か?

調査当日に不動産仲介業者が立会いできないと言われることがあります。

売主が依頼する場合は、売主自身が立会っておれば何ら問題はありません。しかし、買主が依頼者である場合は少し注意が必要です。

不動産仲介業者が立会いしなくても売主が立会いするのであれば、大きな問題はありません。ただし、売買契約や引渡しを終えるまでの間に、不動産仲介業者を介さずして売主と買主が直接交渉などをすることは、トラブルの種にもなりますので、控えておきたいものです。

不動産会社(仲介業者)も売主も立ち会わないと言うが問題ないか?

不動産会社(仲介業者)だけではなく、売主も立会いしない場合があります。つまり、依頼者である買主とホームインスペクターのみが立会って、実施して欲しいと言われることがあります。

これは、誰も居住していない空き家である場合に生じているケースです。鍵や対象物件の管理責任をどうするのかといった問題があるため、できる限り、不動産仲介業者に立会いをお願いしましょう。無理な場合、開錠と施錠、終了時の現地確認をお願いしてみましょう。

買主である依頼者が立会いできなくても大丈夫か?

買主(契約前なので正確には購入検討者)がホームインスペクションを依頼する場合で、事情によりその買主が立会いすることができない場合があります。そういった場合でも、売主または不動産仲介業者が立会いするならば、ホームインスペクションを実行することは可能です。

ただし、調査内容とその結果を理解しづらい可能性があるため、立会いすることを優先的に考えてください。

依頼者である買主が立会いするメリット

買主が立会いするメリット

前述したように、どうしても都合によりホームインスペクションを実施するときに現場へ立会いできないというケースはあるものです。日程的に難しいときや、対象物件が遠すぎるとき、なかには海外にお住まいなので無理だということもあります。

もちろん、何がなんでも立会いすべきだとは言いませんが、依頼者が立会いすることのメリットを紹介しますので、それを見た上でご判断ください。

調査内容と結果は見ていた方が理解しやすい

中古住宅でホームインスペクションを利用すると、築年数が経過している物件ほど、指摘数が多くなる傾向にあります。そういった指摘箇所の詳細や場所の確認という意味で、現地で見ていると非常にわかりやすいですし、後で報告書を見たときも理解しやすいです。

また、担当のインスペクターが、どこを調査しているのか見ておくことは、安心感にもつながります。何を調査してどういう結果だったか、理解を深めるためにも立会いをお勧めします。

質疑応答がその場でできて話が早いし理解しやすい

建物の専門的なことは、一般の人にはわかりづらいことも多いものです。立会いしてその場にいたなら、浮かんだ疑問をすぐにその場で質問することができ、現場で見ているものについて質問するわけなので、質問も伝えやすいでしょう。そして、インスペクターの回答も現場を見ながらの方が理解しやすいです。

その場ですぐにキャッチボールするように質疑応答できるチャンスは大きなメリットだと言えるでしょう。

ホームインスペクターの人柄を確認できる

依頼者が現地に立会いしない場合、基本的には担当のホームインスペクターに会うこともありません。電話やメールで質疑応答することはできますが、実際に面会したかどうかは、話しやすさ、質問のしやすさにも違いでることがあります。

人柄も感じて、後で相談しやすいという意味でも立会いするメリットがあると言えます。

いくらメリットを知っても、どうしても無理だということもありますね。その場合、調査終了後にホームインスペクターとの電話などで調査結果の概要をヒアリングしたり、調査報告書を確認後の質疑をしたりして、できる限り結果の把握に努めてください。

その際、簡単な報告書では結果を把握しづらいですし、そもそも何を質問すればよいかもわかりづらい可能性がありますので、依頼する前に調査報告書のサンプルを確認しておきましょう。

執筆者

アネスト
アネスト執筆担当
住宅購入や新築、リフォーム時のホームインスペクション(住宅診断)を行うアネストが執筆、監修している。
アネストのホームインスペクション

全国で第三者の一級建築士がホームインスペクション(住宅診断)を行うアネスト。新築・中古住宅の購入時やメンテナンス時などに建物の施工ミスや劣化事象の有無を調査することができる。