ホームインスペクションの利用上の注意点
住宅の購入時や新築時、またはリノベーション時などにホームインスペクション(住宅診断)を利用する際には、どういったことに注意しておけばよいだろうか。
よいホームインスペクション会社やホームインスペクター(住宅診断士・住宅検査員)に出会うためには、以下を確認すべきである。
- 建築士資格を保有している
- 設計・監理の経験が十分にある
- 少なくとも5人以上の組織に所属している
- 第三者性を保てる立場である
上記はいずれも非常に重要なことである。まず建築士資格については、「ホームインスペクションの関連資格と資格試験」も参考に見てもらいたいが、ホームインスペクション(住宅診断)をするうえで必要な経験を得られる業務をするためにこの建築士資格が必要である。
その経験というのが、2つ目に挙げた設計・監理の経験である。もちろん、木造住宅のホームインスペクション(住宅診断)をするならば、木造住宅の設計・監理の経験が重要であり、鉄骨造ならばその設計・監理の経験が重要である。なかには、ほとんどビルや学校などの大規模建築物しか経験がないにも関わらず、ホームインスペクション(住宅診断)をしている人もいるために注意が必要である。
次に確認したいことは、5人以上の組織に所属していることである。ホームインスペクション(住宅診断)という業務を何件も実施すればわかるが、いくら業界経験が長くとも自分が経験したことのない問題に直面することが必ずある。そういったときに少人数で運営している場合には、経験量の不足が要因となって適切な判断をできないことがよくある。
それなりの人数がおれば相談しあうことで解決策を見出したり、適切な判断をしたりできる確率が高まる。目安として5人以上の組織であるか確認したいものである。
最後に、第三者性を保てる立場である。これはホームインスペクション(住宅診断)を提供する上で最も基本的なことであるが、残念ながら日本では利害関係者や利害関係者と提携関係にあるホームインスペクション会社が業務を行うことが少なくない。この点については「ホームインスペクションを取り巻く業界環境・思惑」も見ておくといいだろう。
補足としては、最初にあげた建築士資格は必要最低限のものであって、これがあれば十分だというわけではない。現場での業務(工事監理など)の経験がほとんどない設計のみをしている人もいるが、こういった建築士では対応が難しいといえる。
執筆者
全国で第三者の一級建築士がホームインスペクション(住宅診断)を行うアネスト。新築・中古住宅の購入時やメンテナンス時などに建物の施工ミスや劣化事象の有無を調査することができる。