日本のホームインスペクションの歩み・歴史
日本におけるホームインスペクションの歴史はまだまだ浅いものである。アメリカやイギリス、オーストラリアなどでは、ホームインスペクションが長く利用されているが、日本では15年程度である(2015年時点。何をもってホームインスペクションと解するかによる)。
2000年頃にホームインスペクション(住宅診断)を事業として開始した専門性をもった会社が徐々に出てきたが、それ以前にもごく一部でニーズが生じたときに対応するといった建築士(設計事務所)があった程度である。
また、欠陥住宅を購入してしまった人からの相談、検査といった依頼を受け付ける団体や会社はあったが、住宅購入時のホームインスペクション(住宅診断)を継続的に主力事業として提供していた会社は見当たらなかった。
ただ、2000年以降に出現したホームインスペクション会社も、その当時はまだ今のような品質のサービス(実績・経験に基づいてマニュアル化されたサービス)を提供しているとは言い難く、課題も多かった。
利用されるサービスも新築物件の完成・引渡し前検査(竣工検査立会いや内覧会同行などと呼ばれる)が主体であり、購入前の利用は少なかった。
2006~2007年頃から、購入前の住宅に対してホームインスペクション(住宅診断)を利用する人が増え始め、2010年以降にはさらに増えている。特に首都圏などの都市部において利用率が高い。住宅購入前にホームインスペクション(住宅診断)を利用することは当然のこととなる日も近い(既に当然と考えている人も多い)。
2008年には、日本ホームインスペクターズ協会が任意団体として設立され(現在はNPO法人)、ホームインスペクター(住宅診断士)という民間資格を作った。この頃やそれ以降には、他にも民間組織による資格が増え、消費者にとっては大変わかりづらい状況となっている。いずれも建築士資格や経験があれば、取得の難易度が高くない。
ホームインスペクション(住宅診断)と関連性の高い団体、もしくは関連性の高い資格制度を設けている団体の一例としては、「一般社団法人 住宅管理ストック推進協会」「一般社団法人 既存住宅インスペクター教育研究会」「一般社団法人 JBN(JBNインスペクション・システム)」「NPO法人 住宅長期保証支援センター」などがある。他にもいくつもある。
2010年には既存住宅売買瑕疵保険の取扱いが始まり(利用件数は少ない)、注目度が高まった。
さらに、2013年には国土交通省が「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を公表し、ホームインスペクション(住宅診断)の認知度が増し、今や住宅・不動産業界においてホームインスペクション(住宅診断)への理解度が低い人は勉強不足ともいえる状況になった。
この年から既存住宅現況検査技術者の講習も始まったが、既存住宅(中古住宅)の瑕疵保険の取扱いのために必要な資格として業界の注目度は高い。
ホームインスペクション(住宅診断)の認知度は年々、高まってきており、急速に普及している。一方で、ホームインスペクション会社でも診断業務内容についてマニュアル化したり実績データを蓄積したり出来ている会社は限られており、今後は業界全体のレベルアップが課題である。