ホームインスペクションの関連資格と資格試験
ホームインスペクション(住宅診断)は、住宅購入者やリフォームを発注する人にとって利用価値があるとされ、普及してきている。このサービスは、消費者サイドのみならず、不動産業者や建築業者、リフォーム業者にとってもメリットがあるとして不動産・建築業界で広く注目されている。
不動産業者等にとってのメリットとしては、住宅購入者やリフォーム・リノベーションの検討者が安心して取引を進められることになり、お客様の満足度向上が期待できる。また、その結果として販売促進につながるという点において注目されている。
また、ホームインスペクション(住宅診断)そのものを事業として開始することに興味を頂く、建築業者や設計事務所(建築士事務所)、不動産業者も多数ある。
業界で注目を浴びるなか、ホームインスペクション(住宅診断)に関連する資格も増えてきている。2015年6月時点で確認できる関連資格をいくつかご紹介しましょう。
JSHI公認ホームインスペクター(住宅診断士)
「NPO法人 日本ホームインスペクターズ協会」によるもので、HPによると特に受験資格はない。建築業界の人(建築士や建築技術者など)のみではなく、不動産営業の人など非技術系の人も資格を取得している。
ホームインスペクター
「一般社団法人 住宅管理ストック推進協会」によるもので、HPによると受験資格は以下のように記載されている。
『住生活スキルマスター』資格(一般社団法人住宅管理・ストック推進協会実施)を保有していること。
勤務先がいえとまちネットワークの登録店もしくはまち住まいる加盟店であること。
勤務先が住管協が指定する団体に所属していること。
既存住宅インスペクター
「一般社団法人 既存住宅インスペクター教育研究会」によるもので、HPによると受験資格として建築士資格の保有が挙げられている。
JBNインスペクション・システム
「一般社団法人 JBN」によるものだが、HPに詳細な記述は見当たらない。
住宅メンテナンス診断士
「NPO法人 住宅長期保証支援センター」によるものだが、こちらもHPに詳細な記述は見当たらない。
他にも関連資格があるようであり、注目を浴びているがためか資格が乱立しつつあるように感じられる。
住宅を購入する人などのようにホームインスペクション(住宅診断)を利用する人にとっては、大変わかりづらい状況になっているが、いずれの資格についても業務遂行のために必須とはいえないものであり、これらの資格があるからといってそれほどプラスの要素もない。
ホームインスペクター(住宅診断士、住宅検査員)を選ぶときには、これらの資格よりも建築士資格をもっていることを確認しておくべきである。建築士は建築物の設計・監理などを行うために必要な国家資格であり、その業務を通じてホームインスペクション(住宅診断)に必要な知識や経験を得ることができるために、必要最低限の資格だと言える。
また、既存住宅売買瑕疵保険の取扱いをするうえで重要なものが、既存住宅現況検査技術者である。保険の取扱いのためにマニュアル化された診断を行う必要があるため、ある程度の技術的な効果が期待できる。ただし、取得することが容易であるために元々の知識・技術力に乏しくとも取得できるものであるため、マニュアルだけでは判断できないことも多数あると考えられる。
ホームインスペクター(住宅診断士、住宅検査員)やホームインスペクション選びにおいては、建築士資格、経験・実績というものを重視して考えるべきである。
執筆者
全国で第三者の一級建築士がホームインスペクション(住宅診断)を行うアネスト。新築・中古住宅の購入時やメンテナンス時などに建物の施工ミスや劣化事象の有無を調査することができる。