新築一戸建ての竣工検査立会い(ホームインスペクション)の事例 No15
住宅コンサルティングのアネストが行ったホームインスペクションの事例のご紹介です。新築一戸建て住宅を購入後、引渡しを受ける前に行う竣工検査への立会いを行ったときのもので、対象物件は木造軸組工法(在来工法)2階建ての住宅です。
基礎と周辺のインスペクション
住まいの大事な基礎部分に関係する指摘についてご紹介します。
配管貫通部と軽微なクラック(ひび割れ)
以下の写真を見てください。
基礎を建物外部から見た部分の写真ですが。基礎表面にクラック(ひび割れ)が入っているのがわかりますね。軽微なものであり、基礎表面のモルタルにのみ生じているものであるため、主要構造部に関わる問題はありません。
新築住宅の完成直後の時点で、モルタルに軽微とはいえこのようなひび割れが多い場合は、施工品質を疑う必要もありますが、今回の物件では他にも1箇所、同様の問題はありませんでした。今すぐ問題となることではありませんが、補修して頂くこととしました。
この写真には給湯器からの配管が基礎を貫通している個所が見られます。この貫通部を床下調査の際に確認したところ、以下の写真の状況でした。
貫通部周辺のシーリングの施工不良のため、配管周りに隙間が出来ています。この部分の外部側の施工に問題はありませんが、経年劣化により外部側のシーリングが切れてきたときには雨水が床下へ侵入してしまう可能性があります。
こういった施工不良は引渡し前に補修してもらう必要があります。
土台水切りの下部のモルタル
土台水切りとは、雨水が床下へ侵入することのないように防ぐ役割と外部と床下の空気が循環できる箇所を確保する役割があります。
上の写真を見ると水切りの下側でモルタルの仕上げ工事が雑になっているのがわかります。この箇所は水切りより下から見上げるようにして確認するか、鏡を当てて確認しなければ見えない箇所ですから、一般の人がよく見落とすところです。
仕上げが粗く上がれやすい状況になっていますから、経年による剥がれが早期に生じてしまう可能性も考えられます。よって、引渡し前に補修してもらうべきところです。
そのほかのインスペクションの指摘内容
ここからは、この住宅で指摘として挙がったこと等を順にご紹介します。
バルコニーの笠木
以下はバルコニーの笠木と外壁の取り合い部分です。
住宅の代表的なトラブルの1つである雨漏りですが、よくある原因箇所としてバルコニーの笠木があります。特に笠木と外壁の取り合い部分に関する雨漏りは多いですから、注意深く確認したい箇所です。
隙間が残っている状況ですから、補修が必要だと判断されました。また、この周りの施工も粗く、シーリングで埋めている部分に隙間のある箇所がありましたので、これも補修が必要です。
玄関ポーチのタイルの浮き
玄関ポーチの床面はタイル仕上げになっていましたが、そのタイルがいくつか浮いている状況でした。これはよくある指摘ですが、人が毎日歩くところですから、早期にタイルの割れが生じるリスクがありますので、補修を推奨する箇所です。
ユニットバスの床下の断熱
ユニットバスの床下は基礎断熱工法となっていました。基礎立ち上がり部分は一般的にはポリスチレンボードで断熱するのですが、ここではグラスウール(断熱材)を使用しています。グラスウールは湿気を吸収すると効果がなくなり、カビの原因ともなりますので、定期的に確認した方がよいです。
床下の断熱材の欠損
配管を通す位置を間違えたのか、断熱材の欠損部分が必要以上に大きくなっており、これを補修対応していないままになっています。欠損部分の断熱材を補修する必要があります。
主要な構造部分のインスペクション
建物の外部や床下などでいくつか指摘事項があがっていますが、いずれも主要な構造部分に直接関係するところではありません。
床や壁の傾斜測定において問題はなく、床下で確認した土台・大引き・金物・基礎コンクリートにも問題はありませんでした。また、小屋裏でも梁や火打ち梁・金物などに問題はなく、安心できる施工品質でした。
ホームインスペクションの依頼なら
第三者の一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)は、住宅売買・メンテナンスなどに役立つ専門的な技術サービスです。施工不具合や補修すべき劣化事象の有無をプロに診てもらえる。
執筆者
全国で第三者の一級建築士がホームインスペクション(住宅診断)を行うアネスト。新築・中古住宅の購入時やメンテナンス時などに建物の施工ミスや劣化事象の有無を調査することができる。